“正しいスイング”を求めるあまり、スイングがぎこちなくなる。
そんな経験を、あなたもしたことがあるかもしれません。
僕自身、ゴルフを指導する立場にいながら、「このまま“正しさ”を追っていくと、どこへたどり着くんだろう」と考えるようになりました。
読書を通じて出会った「弓と禅」
ある時出会った、ドイツの哲学者オイゲン・ヘリゲル氏の著書『弓と禅』。
そこには、僕がゴルフで感じていた違和感と重なるような話が書かれていました。
「矢を的に当てようとしてはいけない。
“無意識”の状態で射ることこそが、もっとも自然な矢の放たれ方なのだ」
さらに印象的だったのが、次の一文です。
この言葉に、僕は深く共感しました。
弓道を実際に経験したわけではありませんが、
この「精神的に射中てる」という考え方は、ゴルフにおける“無心の一打”と本質的につながっていると感じたのです。
ゴルフと「無心」
「飛ばしたい」「寄せたい」といった強い意図が、かえって力みやブレにつながる。
でも、「ただ打つ」ことに集中できたとき、結果は自然とついてくる。
僕にとってこの発見は、スイング指導の原点を問い直すきっかけにもなりました。
“正しい動き”を教えるのではなく、まず“心と向き合う方法”を共有したいと思うようになったのです。
正解の“外側”にある上達
現代のゴルフ界では、データやスイング理論が進化し、「正しさ」が重視される傾向があります。
でも、その“正しさ”に縛られてしまうと、プレーが苦しくなってしまうこともある。
だからこそ、ときに「正しさ」を手放すことも選択肢のひとつとして知っておいてほしいのです。
あなたにとって、ゴルフとは何ですか?
結果を出すために「正しさ」を追い続けるのか。
それとも、“ただ打つ”という静かな時間に身を置くのか。
僕は今、どちらが良いとも言い切れません。
でも、少なくとも「無心で打つ」という選択肢があることを知っておいてほしいのです。
次回は、『弓と禅』に登場する「離れ」の概念と、ゴルフスイングに通じる“手放す感覚”について掘り下げていきます。
あなたの中の“正解”が、少し緩むきっかけになれば嬉しいです。