正しい答えより大切な力 ― ネガティブ・ケイパビリティ

2025年9月30日 |

私たちは日常生活のあらゆる場面で「すぐに答えが欲しい」と感じることがあります。スマートフォンで検索すれば一瞬で情報が出てくる時代、分からないことを曖昧なままにしておくのが難しくなっています。しかし、この「すぐに答えを求める癖」は、私たちの思考や学びに大きな影響を与えている気がします。それは、私はゴルフにおいても同じことが言えるのではないかと感じています。

すぐに答えを求めることの弊害

  • 表面的な理解で終わる:答えをすぐに知ってしまうと、その背景や理由を考える機会を失います。
  • 応用力が育ちにくい:自分で試行錯誤する経験が不足し、状況が変わると対応できなくなることがあります。
  • 持続的な学びを妨げる:短期間の「コツ」や「裏技」に満足し、基礎を固める努力を怠ってしまう危険があります。
  • 騙されやすくなる:心理学的にも、すぐに答えを出すと直感的判断(システム1思考)に偏りやすく、誤情報や詐欺に引っかかるリスクが高まるとされています。

ゴルフにおける「すぐ理解できる答え」の罠

ゴルフを例にすれば、「プロがみんなやっている〇〇」「PGAツアー選手のインパクトは…」などといったキャッチーなアドバイスは非常に魅力的です。しかし、表面的に理解できたと感じるものほど落とし穴が隠れています。例えば:

  • 部分原理だけで全体を誤認する:形だけを真似すると、運動の順序やリズムが崩れ、逆にスイング全体が不安定になることがあります。
  • 即効性の例外を普遍化する:プロや上級者の動きをそのまま真似しても、同じだけの身体能力や基礎がなければ再現は難しく、月1、2回の練習やラウンドの機会のゴルファーには当てはまりません。
  • 意識と無意識のギャップを見落とす:コーチの前で意識的にできても、プライベートラウンドや競技など緊張感のある場面では再現できないことが多いのです。
  • ノウハウ化で本質を見失う:「正しいグリップ」や「正しいアドレス」という言葉で教わるとそれが絶対に正しいと思ってしまい、全体的な学びを軽視してしまう。

このように「分かったつもり」「できたつもり」になりやすく、結果として過信が生まれ、間違った方向に進んでしまう危険があるのです。SNSに飛びついている人を見ると、このテーマには強く共感するのです。

「すぐ理解できた感覚」はなぜ危険なのか?

心理学や認知科学でも、人が「分かったつもりになる」ことの危うさは繰り返し指摘されています。

  • 過信バイアス:自分の判断を実際以上に正しいと信じてしまう傾向。
  • 自己優越錯覚:多くの人が「自分は平均以上」と思い込む錯覚。
  • ダニング=クルーガー効果:特に初心者ほど、自分の能力を過大評価してしまう傾向。

これらの研究は、「すぐに理解できた気になる感覚」こそが錯覚や過信につながりやすいことを示しています。ゴルフに限らず、ビジネスや日常でも同じではないでしょうか?

ネガティブ・ケイパビリティの重要性

イギリスの詩人ジョン・キーツが語った「ネガティブ・ケイパビリティ(不確実さに耐える力)」は、現代においてますます大切になっています。「すぐに正解が出ない状態」に留まれる力が、深い学びや創造的な成果を生み出すのです。

  • 分からないまま考え続けること
  • 曖昧さを受け入れること
  • すぐに結論を出さず、観察や試行を重ねること

ゴルフにおいても、基礎を固めながら「分からない時期」を耐えることが、最終的な上達に直結します。私はこの“分からない時間”を大切にできると、ゴルフが楽しく思えるときがあります。

このように、答えを急がず曖昧さに向き合う姿勢は、ゴルフの学びだけでなく、日常や仕事においても大切です。短期的な成果やキャッチーな言葉に流されるのではなく、じっくりと時間をかけて考え続けることが、本当の成長につながるのではないかと思います。

ネガティブ・ケイパビリティを語った人々

ジョン・キーツ(詩人)は、1817年に「不確実さ、謎、疑念の中に耐える力」としてこの言葉を使い、芸術家に必要な資質だと述べました。ウィルフレッド・ビオン(精神分析家)は、心理療法の分野で、すぐに結論を出さずに曖昧さを受け入れる姿勢が心の理解を深めると説きました。

近本光司選手(阪神タイガース)は、ラジオ番組「チカブレンド」で、会話や練習において「すぐに正解を求めず考える大切さ」に触れています。僕自身もこれを聞いて、「あ、プロ野球選手が同じことを感じている」と嬉しくなったのを覚えています。

問いと選択を育てる

  • 今日の練習で「なぜこのスイングが崩れたのか?」を自分なりに考える
  • 新しい情報を見たとき「これは本当に自分に必要か?」と問い直す
  • 信頼できるコーチに「どうしてこの方法なのか?」を質問する

成長を支えてくれる指導者はどこかにいます。答えの出ない時間を一緒に耐え、成長を支えてくれる存在こそ、あなたを次のステージへ導いてくれるでしょう。

まとめ

「すぐに答えを求めない力(ネガティブ・ケイパビリティ)」が成長の鍵になります。

  1. 自分の問いを見つける
  2. その問いを育て続ける
  3. 一緒に考えてくれる指導者や仲間を大切にする

これらがこの難解なゲームを攻略する大切なノウハウだと思います。視座を高く持ち、一歩引いた自分を作り上げることでゴルフがまた違った角度で見れるかもしれません。

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この記事を書いたのは

寺嶋 慶介

寺嶋 慶介

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今年も皆さまにお会いできること楽しみにしております。

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