なぜコーチによって言ってる事が違うんだろう…?

2018年2月4日 |


この記事は2013年4月12日に投稿したものを、2018年2月日に加筆して再編集しました。

レッスンを仕事にしていて「AコーチとBコーチが言ってる事が全然違う」なんて話はよくあります。
また最近ではYoutubeなどで手軽にレッスンの情報がとれるようになってきたので、「A論とB論のどちらを信頼すればいいんだろう」と悩む方が多くなってきました。

まずゴルフ理論というのは実際に成果をあげたものも多数存在しますが、万人に通用するものというのは未だありません。一世を風靡した理論もすぐに陳腐化し次々と新しい理論が生まれてくるのも事実です。

理論とは何か?

以前に「ゴルフ理論を上手に使う方法」でも書きましたが、原因→事象→結果という理論として確立されたものであれば再現性がなくてはいけません。要するに「○○すると××になる」ということが10人いたら10人で再現されたらそれは理論と呼べます。

しかし実際に動くのは人間です。
例えば男子プロ10人がやったら10人とも再現できたけど、女子プロがやったら5人も再現できなかった。
あるいは体の柔らかい人10人がやったら全員出来たけど、固い人がやったら1人も出来なかった。という事が起こります。
これは要するに「理論には前提条件がある」と言う事です。

体型や性別

化学の実験などでも同じだと思いますが同じ結果を出すためには「気圧が一定の場合」とか「室温が一定の場合」という条件が付きます。
気圧や室温と違い、同じ条件をもった人間が存在しないのもコーチによって言うことが変わる理由です。

例えば、日本の研究機関で収集されたデータではプロのインパクト時の骨盤と胸郭の角度差は男子も女子もおよそ20度前後でしたが、ダウンスイング開始時の角度差は女子プロが約70度、男子プロは約40度だったと言われています。ダウンスイングで30度も捻転差が違うので、当然教え方が分かってきます。

さらにPGA男子ツアーのシード選手の平均年齢は近年は20代後半から30歳くらいです。女子もLPGAの優勝者の平均年齢は20代前半です。
こうしたトッププロのスイング理論が注目され、多くの人に目に止まりますが、日頃からハードなトレーニングをつんだ20代のプロが取り組むスイング理論と、50代のアマチュアゴルファーやジュニアゴルファーに理想的な理論では部分的にしか一致しないのが現実です。

ジュニア、女性、シニア、アスリートなどタイプによって最適なスイングは違います。
さらに身長、体重や体型、柔軟性というようにタイプによってもアドバイスの内容は全く変わってくるのは想像しやすい点だと思います。

ですから、もしあなたのコーチが雑誌やテレビで言っていることと違うことをあなたにアドバイスしている場合、それはあなたに合わせて言ってくれている可能性が高いです。

道具

スイング理論が変化する理由のもう1つにはギアの技術革新が挙げられます。
ゴルフクラブは確実に進化していて軽量化と強度化が進んでいます。例えばここ20年程でメタルウッドのヘッド体積は200CCから460CCと倍以上に変化しました。またアイアンも高重心のマッスルバックアイアンと、低重心のキャビティアイアンに変わり、最適なインパクトポジションが変わりました。当然求められるスイングも変わります。ボールもしかりで、糸巻きボールから現在の多重層ボールによって弾道は劇的に変わり最適な入射角が変わりました。
このようにギアの進化に合わせて「良いスイング」の定義が変わり、それに伴って理論も変化するという考え方があります。
ですからコーチが皆さんの使っている道具に合わせてアドバイスした場合と、パーシモン時代からの伝統的なアドバイスした場合とで言う事が変わることがあります。

トレンド

3つ目はトレンド(流行)の問題があります。流行に左右されない普遍的なゴルフスイング理論もありますが、ゴルフはスポーツ産業の中でも大きなマーケットであり、マスメディア(雑誌、テレビ)の活動も盛んです。マスメディアの一つの重要な役割はニュースやトレンドを伝える事ですが、例えばマスターズ優勝者のスイングがマイノリティー(少数派)だったとしてもそれは一つの成功例として世界中に波及していきます。ある一定の条件下でのみ成功する打ち方が、万人向けの魔法の理論のように伝わり、またそれをアレンジする人も出てくるので本質とは違うところでスイング理論が議論される事が多いのも事実です。近年だとSAT(Stack and Tilt)がその現象に思い当たりますね。こうしたトレンドを重視するコーチと、伝統的な理論を重視するコーチとでも言ってる事が変わってきてしまいます。

言語表現

4つ目は言語化の問題です。スイングというのは体が無意識に行っている動作です。スイングに関わらずほとんどのスポーツでは感覚(フィーリング)がとても重要です。そしてこの無意識の感覚を言葉にするというのは非常に難しく、同じ感覚をともなった動きでも説明する人によって言い方が変わり、伝わり方が変わります。特にスイング理論の場合は主にクラブや身体のポジションについて語られる事が多いのですが、スイングにおいて重要とされるリズムやタイミングについての記述はされない場合が多いです。スイングは一連の流れの中で行われるのでそれらが適切なポジション且つ正しいスピードで繰り返されなければ成功しない事はみなさんも経験の中で理解していると思います。例えば「ゆっくり上げる」なんてよくレッスン書に書かれる表現ですが、ゆっくりの定義がそもそも人によって全然違いますよね。かといって秒速何メートルで動かしましょうと書いたところで無意味なのは皆さんも容易に想像できると思います。こうした感覚的な要素が理論を複雑にする原因でもあり、また様々な言語的な表現が生み出されることにも繋がっています。

まとめ

様々な理論が登場する背景には、このように様々な要因があります。
メディアに出ている理論が実際に自分に合っているか?を検証するのは難しいと思いますが、ポイントとしては出来るだけ条件が自分に近い人が参考になると思います。
例えば、最近見た中だと、ある女性選手を多く輩出しているコーチは「ダウンスイングでシャフトを横に倒すように」と言っているのに対して、ある海外の男子選手を教えている有名コーチは「ダウンスイングではシャフトを立てるように」と教えていました。
どちらが正解というのはなく、対象とする選手が違い、使っているクラブが違い、理想とするスイングが違い、表現が違うだけなのです。
もし迷ったら自分に近い前提を持っている理論を選ぶとフィットする可能性が高くなります。

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。ゴルフレッスンだけじゃなく、おそらく皆さんの職場でも「A部長とB課長の言ってる事が全然違う..」なんて事ありませんか?少し紐解いて「言っていることの前提は?」を考えてみると面白いかもしれませんね。

Director’s note Back number

この記事を書いたのは

大矢 隆司

大矢 隆司

1980年7月15日生まれ
15歳で単身オーストラアへゴルフ留学Hills Golf Academyで3年間ゴルフを学ぶ。
その後大学在学中にティーチングライセンスを取得しゴルフコーチとして仕事を始める。MBA(経営学修士)のキャリアも持つ異色のゴルフコーチ。
2005年にGEN-TENの設立。現在はディレクターとしてレッスンプログラム開発と組織運営を担当。趣味はゴルフ旅行(スコットランドトリップアメリカトリップ

ゴルフコーチ(USGTF)
メンタルフィットネストレーナー(NESTA)
ゴルフコンディショニングスペシャリスト(NESTA)
ゴルフフィットネストレーナー(JGFO)

Director’s note」を通じて私達が提供するゴルフコースレッスンというサービスについて1人でも多くの方に興味を持っていただけたら嬉しいです。
ゴルフ&ウェルネスツーリズム「The Golf Retreat」も主宰。

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