意識を遠ざけると上達する!? Internal Focus(内部意識)とExternal Focus(外部意識)

2018年7月2日 |


私たちはゴルフをしている時、何を、あるいは何処を、『意識』しているのでしょうか?

ゴルフコーチングではよく『意識』という言葉が使われます。
それは具体的な動きを指す場合もあれば、イメージを指す場合もあります。
ここを意識して振りましょう、こういう意識で振りましょうという具合です。

今回のディレクターズノートではこうした『意識』が与えるパフォーマンスへの影響について考えてみたいと思います。

■Internal Focus(内部意識)とExternal Focus(外部意識)

私たちコーチはアドバイスをする際に「もっと手首の角度を長く保って」とか、「肩を開かないように」という具合に「体の動き」に焦点をあててアドバイスをすることが多くなります。

ゴルフを構成する要素として「ターゲット」「ボール」「クラブ」「自分(身体)」という4つに分けた時に、身体というのは脳からの意識を直接受けているため、体の動きを意識するというのは「自分に意識が向いた状態=Internal Focus(内部意識)」です。一方でクラブやボールやターゲットというのは自分から切り離された物なので外部と考えられ、「自分の外に意識が向いた状態=External Focus(外部意識)」と考えられます。

この意識の内・外がゴルファーのパフォーマンスに影響を与えるのか?という問いについて運動科学を研究するDr Gabriele Wulf博士の(Gabriele Wulf , (2013) Attentional focus and motor learning: a review of 15 years)論文でも紹介されているのは、同じスキルチェックを実施した場合に、体の動きを意識した場合(Internal Focus)と、クラブやボールやターゲットなどを意識した場合(External Focus)で外部を意識した場合の方がパフォーマンスが上がったという研究です。
このような研究は他のスポーツでも多くのエビデンスがあり、そのほとんどがExternal Focus(外部意識)のパフォーマンスがInternal Focus(内部意識)を上回ったというものです。

その理由については諸説ありますが、体の動きを意識的にコントロールしようとする結果、過剰に神経の緊張や筋肉の収縮が起こることで、運動の流動性が阻害されたり、必要以上のエネルギー消費につながり、運動の正確さが低下するからだとするのが一般的です。

■では、なぜアドバイスのほとんどがInternal Focus(内部意識)なのか?

しかし、私も始め多くのコーチやプレイヤーは体の動きについてのアドバイスを実施しています。
これは何故なのか?というと、External Focus(外部意識)の方がパフォーマンスが上がるというのは「成果」であり、アドバイスというのは「プロセス」に言及するものだからです。

ゴルフだと最終成果は「スコア」という数字で出てきます。そしてスコアは「ショットのパフォーマンス」によって作られ、ショットのパフォーマンスは「クラブの動き」によって、クラブの動きは身体の動きによって作られます。
『スコア』←『ショット(ボール)』←『クラブ(スイング)』←『体の動き』という具合です。
ですからスコアを良くするために「原因となっている体の動きを矯正しよう」というアプローチが一般的に多く用いられます。

そして「練習の成果=体の動きの変化」だとすれば、体の動きを矯正する際に「Internal Focus(内部意識)」で練習をするというのは必然となります。もちろんこれ以外のアプローチとして練習器具などを用いたり、”ベルトのバックル”や”衣服の皺”などを意識することでExternal Focus(外部意識)を用いた練習方法に切り替えることも効果的であると言えます。

また内部意識で練習をしている時はショットのパフォーマンスに執着しないというのも重要なことが分かります。
スイングを矯正する過程でナイスショットが出ないことにストレスを溜める方が多いのですが、ショットのパフォーマンスを上げることと、体の動きを矯正することは、意識という視点で切り分けて考えると目的が異なり、技術の獲得を目指す際はそれが「無意識」でできるレベルで定着するまで結果を求めなくてもいいことが分かります。

このことから練習器具を使用する効果は、器具という外部に意識を向ける事で、結果としての成功体験を多く獲得できることので技術の獲得がスムーズになるというのも推測できます。

■プレー中は身体から意識を遠ざけることでパフォーマンスが向上する

練習ならまだしも、実際の競技の中や、スコアをつけてプレーする際に体の動きを意識しながら高いパフォーマンスを獲得するのが難しいことも理解できました。

私も数え切れないほど多くの失敗経験がありますが、振り返るとその多くは内部意識の状態でプレーしていた時だと思います。
スイングに悩むプレイヤーのパフォーマンスが低調な原因の一つに「体の動きに意識が向きすぎる」というのが挙げられます。

“I stopped playing golf and started to play golf swing”
(私ゴルフをやめて、ゴルフスイングをはじめてしまった)

という有名な後悔の言葉が示す通り、スイングというのはコースの中では意識するものではなく、あくまでもプレー中の意識はターゲットに向いているのが理想と言えます。

■プレー中にできるExternal Focus(外部意識)の獲得法とは

私が15歳でオーストラリアに行った時に最初に教わったことが、いま振り返るとExternal Focus(外部意識)の獲得でした。
コーチのケン・バーントは「ワッグル」の重要性を常に説いていました。
そのアドバイスは、『ボールを見ながらワッグルをしてはいけない。ターゲットを見ながらワッグルを行いなさい。』これは今思うと、意識を遠ざけるためもっとも手軽な手法だったのだと思います。実際にやってみると肩や腕の力がスッと抜けて、意識が体やクラブから離れていくのが実感できるのでオススメです。

またターゲットを見ながらの素振りも有効です。ドライバーなど深いバックスイングを取るクラブでは難しいですが、特にショートスイングやパッティングなどでターゲットを見ながら素振りをすることで、意識が体から離れることが実感できます。
練習と本番で意識を変えるというのは難しく感じるかもしれませんが、こうしたプレー中の「ワッグル」や「素振り」という行動を入れることで意識をコントロールすることができます。

■まとめ

いかがでしたか?
今回は「意識」という非常に曖昧なテーマについて取り上げましたが、私は意識がパフォーマンスに影響を与えることを信じている1人です。

多くのゴルファーがスイングに悩んでGEN-TENに訪れますが、その状態から内部意識をもつとさらに深みにはまってしまうケースがあります。

もしこれを読んでいる皆さんの中で、どうもパフォーマンスが上がらないという方がいたら、意識を意識(?)してプレーしてみてください。
パフォーマンスが変わるきっかけになるかもしれませんよ。

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この記事を書いたのは

大矢 隆司

大矢 隆司

1980年7月15日生まれ
15歳で単身オーストラアへゴルフ留学Hills Golf Academyで3年間ゴルフを学ぶ。
その後大学在学中にティーチングライセンスを取得しゴルフコーチとして仕事を始める。MBA(経営学修士)のキャリアも持つ異色のゴルフコーチ。
2005年にGEN-TENの設立。現在はディレクターとしてレッスンプログラム開発と組織運営を担当。趣味はゴルフ旅行(スコットランドトリップアメリカトリップ

ゴルフコーチ(USGTF)
メンタルフィットネストレーナー(NESTA)
ゴルフコンディショニングスペシャリスト(NESTA)
ゴルフフィットネストレーナー(JGFO)

Director’s note」を通じて私達が提供するゴルフコースレッスンというサービスについて1人でも多くの方に興味を持っていただけたら嬉しいです。
ゴルフ&ウェルネスツーリズム「The Golf Retreat」も主宰。
大矢隆司 公式ブログ(takashioya.com)

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