バンカーショット。
「苦手意識の強いショット」として語られることが多いこの場面。
しかし、私にとってはバンカーこそ“ゴルフスイングの基本”を学べる最高の場所だと考えています。
なぜなら、バンカーではスイング技術の土台そのものが結果に現れるからです。
逆に言えば、バンカーでしっかりとしたスイングができれば、他のショットの精度を高めることができると思います。
目次
バンカーは“スイングそのもの”が問われる場面
一般的なショットでは、多少タイミングがズレても“そこそこの”結果につながることがあり、評価も曖昧になることがあります。
しかし、バンカーショットではごまかしが効きづらいのです。
必要なクラブスピードが出ているか
クラブヘッドの加速感、または等速感があるか
クラブヘッドの最下点やフェースの打点の位置
こうした要素が揃っていなければ、バンカーショットは成立しません。
良いスイングができていないと、バンカーショットは成功しないのです。
バンカーショットとスイングスピードの関係
興味深い研究があります。
Wivouら(2016, 2019)の研究では、バンカーショットの成功率とクラブヘッドスピードの関係性が示されています。
特に初級〜中級ゴルファーでは、ヘッドスピードが一定以上に達していないとショットの安定性が著しく低下することが示されています。
十分なスピードがなければ、砂を適切に飛ばせず、意図した距離や高さが出ません。
一方で、一定以上のスピードが出せるようになると、スイング全体の一貫性・ヘッド軌道の正確さ・フェース管理の方が成功率により強く関わってくる段階に入っていきます。
これらの報告からバンカーショットは、
① 最低限の正しいスピード感を身につけ → ② スイングの精度・再現性を磨く
という、スイング技術そのものの習得ステップと極めて近い構造を持っているのです。
バンカーショットはゴルフスイングの上達の鍵
私がバンカーショットを「ゴルフスイングの中心」と考える最大の理由は、
バンカーで身につけた動きが、そのまま他のショットに活きるからです。
・フルショットのように振り切る(ヘッドを加速させる)力の出し方
・アプローチショットのように、ヘッドの加速度に変化を出すための力の使い方
・イメージしたボールを打つためのセットアップの方法
・打点(クラブヘッドの最下点とフェースの打点)のコントロール
これらはすべて、バンカーで自然と養われます。
だからこそ、バンカー練習を“特殊なショットの練習”としてではなく、
スイングそのものを磨く練習と位置づけて取り組む価値があるのです。
バンカーショットが下手なコーチはいない
私はゴルフレッスン歴が10年ほどになりますが、
バンカーショットを上手に打てないコーチには一人として出会ったことがありません。
それは、バンカーショットを安定して打つには、
ある程度の正確な知識とスイング理解が不可欠だからだと思います。
ゴルフスイングを教えるスキルを持っていることが、
バンカーショットを安定して打てるという現実を示しているのです。
バンカーショットは、スイング技術の理解度を示す“照らし鏡”だと私は考えています。
「バンカーショットを磨くことは、ゴルフ全体を磨くこと」
もし今、あなたがバンカーショットに苦手意識を持っているなら、
それはむしろスイング全体を見直す絶好のチャンスでもあります。
「クラブを振り抜く感覚」
「ゴルフスイングに必要な体の使い方」
「イメージしたボールを打つための構え方」
こうしたゴルフスイングの上達に不可欠な動きを身につけるために、
バンカーほど学びやすい優れた教材はありません。
バンカーを攻略できたとき、あなたの中に新しいゴルフの感覚が生まれるでしょう。
-引用・参考文献-
Wivou et al., Biomechanical differences in clubhead velocity and swing technique between experienced and less experienced golfers during greenside bunker shots, 2016.
Wivou et al., Further analysis of bunker shot performance and kinematic differences, 2019.