ゴルフをしていると、ふとした瞬間に
「これは気持ちよかった」「今のは勝手にクラブが動いた」
そんなスイングが生まれることがあります。
しかも不思議なことに、そうしたスイングのときは、
- ミスショットではなく、むしろ芯をとらえたインパクト
- ボールがスーッと自然に飛んでいく
- 身体の動きが無理なくスムーズだった
──まるで、自分が動かしたのではなく、「動きが勝手に出てきた」ような感覚になるのです。
感覚の正体を探していたら、そこに「名前」があった
大学時代のスポーツコーチング論の授業でした。
当時担当されていた湯浅景元教授が冒頭で、こう語られたことが強く印象に残っています。
「サイクロイド曲線やクロソイド曲線は、日常にあるカーブの設計に応用されている」
実際、高速道路の設計には「クロソイド曲線」という、滑らかなカーブが使われています。
その目的は、無理のない加減速と、安全で自然な進入・脱出。
この“滑らかで無理のない動き”という発想は、まさにゴルフスイングの理想にも重なるものでした。
そのときはただ「そんな世界もあるんだ」と思っていましたが、
ゴルフスイングの“自然な軌道”を探っていたときに、ふとこの言葉を思い出したのです。
サイクロイド曲線は、円が直線上を滑らずに転がるとき、その縁の点が描く軌道であり、
数学的には以下のように表される滑らかな放物線のような曲線です。
x = r(t - sin t), y = r(1 - cos t)
…と、数式で表現されるみたいで、数学が苦手な私にとっては何なのかはよくわかりません。
ですが、実はこのサイクロイド曲線には、人間の動きにとって非常に“自然な軌道”という特徴があります。
引用元:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Cycloid_animated_.gif
サイクロイド=身体が選ぶ「自然な軌道」
たとえば:
- トップからスイングの最下点に向かうクラブヘッドの動き
- ダウンスイングから体にある支点を中心に開放されながら動いていくシャフトの軌道
これらを統合したとき、軌道がサイクロイド的な形状に似ていることが分かります。
もっとシンプルに言えば──
「クラブが自然に動いてしまった」
「打とうとしていないのに、きれいに当たった」
というあの“無意識の動き”の中に、
実はサイクロイドのような軌道が含まれている可能性があるのではないかと思うのです。
なぜ「気持ちいい」と感じるのか?
人間の身体は、「最短で、最小エネルギーで動ける軌道」を本能的に選ぼうとします。
実は、サイクロイドは物理的にも「最速降下曲線(Brachistochrone)」と呼ばれ、
斜面を滑り落ちる物体が最短時間で目的地に到達できる軌道として知られています。
つまり、もっとも合理的で、無理のない自然に従った動き。
それがサイクロイドであり、私たちの身体が“気持ちいい”と感じる運動軌道でもあるというわけです。
言葉を与えると「再現」できるようになる
たとえば、サイクロイドという言葉を知らなければ、
- 良いスイングができた理由が分からない
- 再現したくても手がかりがない
- 「今日は調子がいい」「昨日はダメだった」で終わる
──というように、感覚に頼りきったゴルフになってしまいます。
でもそこに、
「今の軌道は“なめらかな曲線を描くことができた”」
という言葉としての感覚が与えられたとき、
その気持ちよさを再現するヒントになります。
(6年前にサイクロイド曲線とゴルフスイングについての記事を書きました。)
物理学者ではないので、真意は分かりませんが、
「気持ちよく振れた」「勝手に動いた」というあの感覚はサイクロイド(Cycloid)曲線に沿った軌道ではないかと思うのです。