芝生について語りたい!後編

2015年11月16日 |

後編では、世界最高の芝生クオリティを誇るプライベートコース、オーガスタナショナルゴルフクラブをご紹介します。
芝生について語りたい!

オーガスタの街は、アメリカのジョージア州にあります。古く18〜19世紀には、このエリアでは藍(インディゴ)のプランテーションが行われていました。1857年に、土地はベルギーのバークマン男爵の手に渡りました。バークマン氏は農学者であり、その息子プロスパーは園芸家でした。世界中から植物や樹木を輸入し、植物園を経営しました。1910年、プロスパーの死をきっかけに閉園、その後20年間、手つかずのままで放っておかれていたそうです。1930年、ボビージョーンズがオーガスタの地を訪れました。彼は「球聖」と呼ばれた天才アマチュアゴルファーです。地元ジョージア州アトランタ出身で、200kmほど東にオーガスタの町があります。この年、彼は28歳で、全英アマ、全英オープン、全米アマ、全米オープンの、アマチュアが出場できる4大大会すべてを制して年間グランドスラムを達成し、競技ゴルフから引退しました。
ボビーはこの植物園だった理想の土地を購入し、アリスターマッケンジーにゴルフコースの設計を依頼しました。オーガスタナショナルGCは1932年にオープンしました。1934年からAugusta National Invitation Tournamentが開催され、その大会は1939年にマスターズトーナメントという名前に変更されました。毎年4月第2週目に行われる、米国PGAツアー4大大会の1つです。

このトーナメントに照準を合わせて、最高のコースコンディションが作られます。オーガスタは寒地型と暖地型の中間に位置しています。フェアウェイ、グリーンともに1980年までバミューダグラスが使われていましたが、1981年にグリーンがベントグラスに変わりました。バミューダグラスの時代のグリーンのスティンプは8−9.5でした。現在は改良ベントグラスの一種、ペンクロスA-2が使われており、スティンプは12-14辺りであるようですが、コース側は芝について一切公式発表をしないため、憶測の域を出ません。
5月半ばから10月半ばまでの5ヶ月間、暑いのでコースは完全に閉じられ、メンテナンスが行われます。高い湿気と気温で芝生がダメージを受けないよう、グリーンの上にはテントが張られ、扇風機が設置されます。
10月にオープンすると、フェアウェイのバミューダグラスの上にライグラスの種を蒔き始め、マスターズが行われる4月頃には、フェアウェイは完全にライグラスのみに生え変わります。前編の復習をしますと、バミューダグラスは暖地型の芝生で、ライグラスは寒地型の芝生です。下は実際のオーガスタナショナルのフェアウェイですが、このきめの細かさ、絨毯のようですね。
芝生について語りたい!

トーナメント60日前からは、米国各地から約1000人のスーパーインテンダント(グリーンキーパー)がボランティアとして集まり、マスターズに向けてコース整備を手伝います。4月初旬のマスターズの2週間前から再びコースを閉鎖し、トーナメントに備えます。トーナメントのあとは約1ヶ月プレイが可能で、再び5月半ばから閉じられます。つまりメンバーとゲストがコースでプレイできるのは、10月半ばから3月半ばと、4月半ばから5月半ばまでの半年余りというわけです。

芝生について語りたい!オープン トーナメント 閉鎖

グリーンの管理には、ハイテク技術が使われています。全ホールのグリーンの下に、水と空気の通るパイプ、圧力弁、ファンと電気モーターが埋まっています。2005年にエーメンコーナーの工事が終わり、システム設置が完了しました。
芝生について語りたい!

大雨が降ると、センサーでモーターが作動し、パイプを真空状態にし、雨水を素早く下水パイプに逃します。たとえ嵐が来ても、グリーンの速さは変わらないそうです。逆に気温が上がって乾燥してくると、パイプに水を送り込み、芝生や土に水を行き渡らせます。エアレーションはせず、その代わりにパイプから直接根に酸素を送り込みます。
この最新鋭のシステムはSub Air Systemといいます。オーガスタのスタッフが考案して、独立して会社を設立しました。今ではこのシステムが、ペブルビーチ、TPCソーグラス、パインハーストNo.2にも導入されています。
芝生について語りたい!(SubAir Systems, LLC | http://subairsystems.com)

20年ほど前に、知り合いがオーガスタナショナルでラウンドしました。大会前だったため、芝生を傷つけないように、フェアウェイでは球の落ちたところに人工芝のシートを敷いて、そこから打つように指示されたそうです。300名ほどのメンバーがいますが、地元ジョージア州に住むメンバーは、わずか2名だというウワサを聞いたことがあります。実際にゴルフをするメンバーは、300人中何人だろうかと思います。ふつうはゴルフ好きな人が、恵まれた環境で心ゆくまでゴルフを楽しみたいからプライベートのメンバーになるものですが、オーガスタナショナルの誇り高きパトロンの方たちにとっては、自分のゴルフは二の次で、いわば世界文化遺産を守るかのような気持ちで、コースとマスターズを愛し、支援しているのだと思います。
芝生について語りたい!

米国PGAメンバーになると、全米のPGAツアーの試合を無料で見に行くことができます。マスターズもフリーアクセスです。マスターズのチケットは、パトロン、支援している企業、地元の住民などに配布・販売され、抽選もあるようですが一般の入手が困難です。入り口付近でダフ屋から買うこともできますし、最近は旅行代理店がツアーを組んでいますが、チケットはとても高価です。大きな声では言えませんが、マスターズを見に行きたい!というのが、私がPGAメンバーになりたいと思ったモチベーションの半分ぐらいを占めていました。
1回だけですが本当に観戦に行きました。石川遼選手が初出場した2009年です。どこを見回しても大物選手ばかり、やはりあの大会は特別です。パー3コンテストで、ゲーリープレイヤーの池ポチャのあとのホールインワン(実際はホールインスリーですが)に歓声をあげたり、本戦ではエーメンコーナーや最終ホールのグリーン脇に椅子を置いて、日がな1日定点観戦をしたりしました。
芝生について語りたい!芝生について語りたい!芝生について語りたい!芝生について語りたい!芝生について語りたい!

実際に歩いてみると、TVで見るよりずっと起伏の大きいコースだということが分かります。レイアウトや景観はもちろんのこと、芝生の色やキメの細かさ、植物の美しさに心を奪われます。まるで庭園のようです。植物園時代から生育していた植物が多く残り、藤(ウィステリア)、アザレア(ツツジ)、ドッグウッド(ハナミズキ)、マグノリア(モクレン)などの花々が咲き乱れ、あちこちにとてもいい匂いが漂っています。
選手のいない朝のうちにコースを散歩しているだけで、とてもシアワセな気分になります。こんなに美しいコースは見たことがないと思いました。コースのどこにいても、何をしていても飽きることがなく、それはそれは貴重な体験をしました。うっとりとするようなコースコンディションには、まったく別次元の管理方法があったのですね。 

「芝生について語りたい!前編&後編」、いかがでしたか?
次回からは、夏の修行中に感じた「日本とココが違うよ、ミシガンのゴルフ事情」をお送りしたいと思います。お楽しみに〜☆

そして、ゲンテンの大矢ディレクターが今年のマスターズ観戦に行きました。まだブログをご覧になってない方は、ぜひコチラをどうぞ!

ご予約はこちらから

この記事を書いたのは

野村 祥子

野村 祥子

皆さまいかがお過ごしですか?
12月から日本でレッスンを再開させていただきます。
コースでお会いできることを楽しみにしています。

週間アクセスランキング

  1. そのユーティリティの構え方と打ち方で合ってますか?FP値(フェースプログレッション)を知って苦手克服 225ビュー
  2. キャディバックの持ち方 157ビュー
  3. レイドオフが正解?迷ったらスイングのグラデーションで整理してみましょう 141ビュー
  4. 「スプーン」は必要?!3番ウッドについて考える 137ビュー
  5. 競技用スコアカードの書き方 121ビュー
  6. ウォーターハザードとラテラルウォーターハザードの違い 116ビュー
  7. パットでショートしてしまうゴルファーの特徴と改善方法 107ビュー
  8. 2023年新ルール知ってますか? 106ビュー
  9. ゴルフ 左足上がりのアプローチは2通りの打ち方で対処! 98ビュー
  10. ラウンド中に出てしまうトップボールの3つの原因と対策 90ビュー

過去7日間にページビューの多かった記事を表示しています。これを見ると「GEN-TENの原点」の読者のみなさんがどんな記事に興味があるかわかってしまいますよ

記事を検索

to top
ページの先頭へ戻る