パッティングで最もスコアに直結する要素の一つが「距離感」です。上りも下りもある中で、なぜ狙った距離にボールを転がすことが難しいのか?
多くのゴルファーが陥るのは「感覚に頼る」ことです。
感覚そのものは大切ですが、それだけでは、前回とは違うコースのグリーンや季節によってのグリーンの速さに対応できなく、距離感の再現性が落ちてしまいます。
そこで、必要になるのが理論的な「基準」となるストロークの考え方を持つことです。これが安定した距離感への第一歩になります。
パッティングは「振り子」で考える
距離感を安定させるために、まずベースとなるストロークの形が大切です。
その王道は、「等速の振り子(ペンデュラム)運動」になります。
ペンデュラム(振り子の)ストロークの特徴は、バックスイングとフォロースルーが対称的であることです。
加速しすぎたり、減速しすぎることが少ない
一定のストロークでストロークされることにあります。
これにより、振り幅(長さ)=距離というシンプルな構造が成り立ちます。
パッティングにおけるストロークのスピードの正体
等速 = 「ずっと同じスピード」ではない
パターは等速でストロークすると耳にしたことがあると思いますが、
「等速」という言葉を聞くと、多くの人が「常に一定のスピードでパターを動かすこと」だと想像します。
しかし、実際のパッティングは振り子運動に近く、クラブヘッドの速度は一定ではありません。
ペンデュラムストロークでは、ダウンスイング直後は加速し、インパクトの手前ではやや減速します。
では、なぜそれでも「等速」と呼ばれるのでしょうか?
「1:1の時間配分」こそが等速の本質
等速ストロークの“本当の意味”は、
「バックスイング:ダウン+フォロー」にかけての“時間の対称性”にあります。
たとえば、次のようなストロークが理想とされます。
フェーズ | 所要時間 |
始動〜トップ | 約0.65秒 |
トップ〜インパクト | 約0.35秒 |
インパクト〜フィニッシュ | 約0.30秒 |
合計 | 約1.30秒 |
※90bpmのスピードで打った場合
このように、バックスイング(0.65秒)とダウン〜フォロー(0.65秒)で、1:1の時間配分となっており、
リズムが整っているため、ペンデュラムストロークは「等速ストローク」と呼ばれます。
テンポとリズムの安定が距離感を生む
平均テンポを「90 bpm」で考える
パッティングにおけるストロークのテンポ(速さ)は、プロでも幅がありますが、
パッティングコーチたちの中では、90 bpm(1分間に90回の拍)を一つの目安にします、
実際、多くのプロも85〜115 bpmの範囲に収まっています。
リズムは「2:1」で考える
そして、リズムで表現すると、
バックスイング時間 : ダウンスイング時間
= 2 : 1
バックスイング時間:ダウンスイング時間とフォロースルー時間
= 1 : 1
このような割合が平均的なリズムとされています。
距離に応じて振り幅で調整する
テンポとリズムが毎回安定していると、ストロークの長さ(振り幅)で距離を導き出すことができます。
「等速の振り子運動では、移動距離は振り幅の2乗に比例」という物理法則に基づく、
実践的なパッティング距離計算モデルで説明ができます。
バックスイングとボールが転がる距離の簡単にイメージするとしたら、
ボールが転がる距離(=移動距離)は、バックスイングの長さの「2乗」に比例するので、
バックスイングが2倍になると、ボールの距離は4倍
バックスイングが3倍になると、ボールの距離は9倍
「前よりちょっとだけ大きく振っただけなのに、ボールがかなりオーバーした…」
という記憶はないでしょうか?
「振り幅の2乗」が効いてくることを理解しておくと良いと思います。
距離別・バックスイング目安表
距離(ft) | 距離(m) | バックスイング(cm) |
3 ft | 0.9 m | 約14.0 cm |
5 ft | 1.5 m | 約18.0 cm |
7 ft | 2.1 m | 約21.3 cm |
10 ft | 3.0 m | 約25.5 cm |
15 ft | 4.5 m | 約31.2 cm |
20 ft | 6.0 m | 約36.0 cm |
30 ft | 9.0m | 約44.2 cm |
※クラブヘッドの重さは変化要素として除外
※平坦で無風、スティンプ10ftの環境にて
※90bpmのスピードで打った場合
※バックスイング時間:ダウスイング時間=2:1と計算
テンポスティックを使った練習が効果的
さきほどの早見表は、一定の条件下での目安になります。
実際は、グリーンの傾斜やグリーンの速さは場所によってことなります。
Visio Puttingのテンポスティックというトレーニングギアは、「テンポ」「ターゲットまでの距離」「グリーンの速さ」「グリーンの傾斜」などの変数を入れることで、
必要なバックスイングの量が視覚的に分かるように表示されます。
また音に合わせて振ることで、どんなスピード感で振れば良いかが体感できます。
まとめ:感覚より「振り幅」で合わせる
距離感は、ペンデュラムストロークを前提にバックスイングの大きさで計算することができます。当て感や手の感覚は補助的な役割として機能させることが大事だと思います。
こうしたスタンスが身につけて、テンポスティックなど使って、
感覚だけに頼らない練習を重ねると自ずと距離を合わせられるようになります。