ゴルフスイングでは昔から「下半身から動かしましょう」、「腕を使わず腰を回して」、「下半身リードが大切」と言われてきました。
実際にプロのスイングを分析すると、地面に近い部位から順番に動きが始まる現象(運動連鎖)は確かに存在しています。しかし「下半身リードを意識していることで、かえって上手にボールを飛ばすことができない人」を日々多くみています。
私自身も「足から動こう」と強く意識するとスイングのバランスが悪くなり、「ヘッドスピードが上がらない」、「フェースが開いて当たる」、「インパクトで間に合わず振り遅れる」、という感覚になることがあります。
では、なぜこのようなことが起きるのでしょうか。今回は、ゴルファーなら誰もが不思議に思うこのテーマについて考えてみたいと思います。
-「下半身リード」は本当に正しいのか?-

プロや上級者のスイングを見ると、トップからダウンスイングにかけて足圧変化、骨盤運動の動きに注目すると、クラブや腕の動きより先に動いているように見えます。これ自体は事実としてあります。
しかし重要なのは、“先に動いて見える”ことと、“意識的に先に動かしている”ことは別という点です。私もそうでしたが、ここで苦戦してゴルフの上達が難しくなっている可能性は多いにあります。
-人間の脳は「部位」を動かしていないという見解-
わたしたちは本来、“身体の部位”を順番に操作して動いているわけではありません。
例えばボールを投げる時に、 「まず股関節を動かして…次に腹筋を使って…」 とは考えていないはずです。
多くの場合、 「ボールを投げたい」 という目的に対して、 身体が自然に協調しています。
しかし私たちはつい、“ゴルフスイングを考える時にだけ”、足や腰、胸、肩、腕、クラブその1箇所を動かそうと考えがちです。

(歩き出す時に右足を出して、重心を移動させて..など考えないけれでも歩くことができる)
「運動制御の学問では、人間の脳は個別の筋肉や身体部位を逐一操作しているというより、“何をしたいか”という運動目的に対して全身を協調させていると考えられています。
この考えは、生理学者 Nikolai Bernstein の“自由度問題(Degrees of Freedom Problem)”や、近年の Dynamical Systems Theory、Ecological Dynamics の考え方にもつながっています。
-目的に対して自然と体を反応させる-
Gabriele Wulf の研究では、“腰を回す”“下半身から動かす”といった身体内部への注意(Internal Focus)よりも、“クラブをどう動かすか”“ボールをどう飛ばすか”といった外部への注意(External Focus)の方が、運動パフォーマンスや学習効率を高めることが示されています。」
ボールを投げる時、「ボールを投げたい」 という目的に対して、身体が自然に協調しています。
ゴルフスイングも本来は同じです。
私たちの意識とは裏腹に脳が優先しているのは、「クラブをどう動かして、ボールにヒットさせるか」です。
もし「下半身リード」を意識をすることで上手くいっていない方は、ゴルフは“道具操作”であるという点に大事にされると良いと思います。
スイング中のゴルフクラブの情報(長さ、重さ、クラブヘッド位置、フェース向き)は、手、指、前腕を通して知覚されています。そしてそれらの情報は足、下半身で感じることができないと思います。クラブ操作のセンサーは手にある。にもかかわらず、「手を使うな」「腕を使うな」「下半身で振れ」を強く意識すると、クラブを扱う感覚そのものが消えてしまうことがあります。
-まとめ-
私もかつて、「手を使うな」とか「足で打て」というような表現でゴルフを教えられたことがあり、雑誌や動画で有名プロゴルファーもそのように言っていることからそれが正しいのだと思っていました。人間の動作に関する研究に触れると必ずしもそのようなアドバイスは、適切でないと思いますし、それらの表現は扱う場面が限られるアドバイスかなと思っています。
次回、それではなぜ上級者やプロゴルファー、指導者が「下半身リード」という表現でゴルフスイングに言及するのかについて解説していきます。


